福原2:37

昼下がりのマダムが暇になる頃、ぼくはこの世に産み落とされたそうです。
正確な時間なのかは定かではありませんが、
へその緒の箱に記載されていた14:37の数字。

あれから50年目のジャスト2時37分に、
ぼくは積み込みを終わり、BMWスタジアムへと出発しました。
昨日の出来事です。

胸には、いつもくぅちゃんがぶら下がっていて、
くぅちゃんが大好きだった、ツナギを着て、フレンチトーストを焼きました。

そして、サポーターの皆様だけではなく、
海から、陸から、たくさんのお友達がお祝いに駆けつけて下さいました。

ぼくは、完全に舞い上がっていました。
とてもとても幸せでした。
ハーフタイムに、とある出来事が起こるまでは。

トイレからキッチンカーに戻った時でした。

「ちょっと！売上と釣り銭置きっ放しでどこ行ってんの！」

すっかり日も暮れた真っ暗なナイター時のハーフタイム。
暗がりに響く聞き慣れた声の主は、ぴぃでした。

なぜここに居るのか。
いつ、どうやってスタジアムに来たのか。
そんな疑問を上書きしてしまうに十分な威圧感。

実際に口にした訳ではないのですが、「ギョッ」。
さかな君のように、繰り返す余裕もなく首をうなだれて詫びる僕。

結局、今までとなにも変わらない50代の幕開け。
還暦まで後10年のカウントダウンの始まりです。

10年後には、赤いツナギで真っ赤な食材で。
とりあえず、後10年は現役続行ということで、
僕が叱られている姿を笑ってやって下さい。